十万山の四季Ⅵ 〜淡島神社との出会い〜

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十万山登山道は,2合目をすぎたあたりで人家が途絶え,しばらく行くと,右へ大きくカーブします。その手前山側に,淡島神社があります。

秋が深まり行く11月中旬,いつものように,マウンテンバイクで頂上を目指しました。淡島神社を過ぎて,道なりに右へ曲がり,20mほど走った時,バイクが上下にバウンドし始めました。後輪がなぜかパンクしていたのです。登頂はストップです。妻に,自転車を載せることができるワゴン車で迎えに来てくれるよう連絡しました。20分ほどかかるそうです。

淡島神社の鳥居の傍らにある石板には,神社の由来が彫られていました。御祭神は,少名毘古那神(すくなびこなのかみ)。日本書紀では「少彦名命」と書き,出雲大社の祭神である大国主命と義兄弟の契りを結ぶ関係です。医薬や安産の神とされています。医薬の神であるなら参拝しなければと思い立ち,初めて鳥居をくぐりました。

草生した,ジグザグの急勾配の石段が続きます。50段ほど登ったところで見上げると2つ目の鳥居があり,その向こうに社殿が見えました。恐る恐る境内に足を踏み入れると,白木造りの社は四間四方の構えでした。「千と千尋の神隠し」みたいに,時間と空間の迷路に彷徨い込んでしまったようでした。四方はモスグリーンの林に囲まれています。上方は木の梢に阻まれ,空はほとんど見えません。まさに,緑一色の世界です。社に手を合わせようとした瞬間,「元の世界に戻れないのでは」との恐怖が頭をよぎり,ここが医薬の神であることも,賽銭を入れることも,完全に忘れてしまっていました。やっとのことで,パンクしたマウンテンバイクの元へ帰れることだけを祈りながら,二礼二拍手一礼をしました。

脚をガクガク震わせながら石段を降り,無事にマウンテンバイクへ戻ることができました。ほっとしていると,妻のワゴン車がやってきました。バイクを積み込んで,自転車店まで運びました。

翌日,修理の終わったバイクを持ってきてくれた店長に,パンクの原因を尋ねると,「判りません」と言って口ごもってしまいました。

天草医報2021年1月号へ掲載 2020年12月25日校了

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