中洲徘徊録6 〜博多駅界隈徘徊の巻〜

2月初めから左足に痛風発作を発症したため、マウンテンバイクでの十万山登山行を一時中断しておりました。日常診療は普段通りですので、「身体」と「心」の疲れのバランスがとれません。身体が疲れないままに、心だけが疲れると、イライラが募ります。心の疲れを癒やす必要が出てきます。そこで、2月中旬の週末、博多駅周辺の徘徊を思い立ちました。いまだ、福岡にはCOVID-19感染者の報告はありませんでした。

土曜の午後、自宅を出発。全行程を単独での車による行動としました。宇土近くの交差点を左折。玉名方面、菊水インターを目指します。途中の道の駅「菊水」で温泉と水風呂に交互に浸かりました。さっぱりとした後は、菊水インターから高速へ。夕方6時前に博多駅に着きました。まずは腹ごしらえです。

前から、少々気になっていた店があります。博多駅筑紫口ヨドバシカメラ前の、屋台のステーキ店です。歩道の上に透明のビニール張りで小屋が設えてあります。屋台なので、一人でも入りやすいのです。メニュー表を見ますと、肉の種類によって、グラム単位で値段が異なり、しかも自分の希望する量を100g単位で注文できるようになっています。メニュー表の真ん中に、この店の看板メニューと思しきステーキ肉の写真があります。牛サガリ1g6円。ヒレは、1g13円。消費税込みかどうかはわかりません。100g600円から、400g2400円まで、様々に表記されています。悩んだ挙げ句、300g1800円の牛サガリステーキを注文しました。ジュージューと焼けた鉄板に載せられて十数切れに切り分けられた肉が運ばれてきます。もちろん、生ビールは注文済みです。2杯の生ビールと1杯のハイボールとともに、すべての肉をとても美味しく胃袋に流し終えました。

博多阪急を通り抜けて博多口へと向かいました。途中、グッチとルイヴィトンの店が気になりました。グッチでは、ディズニーのミッキーマウスの図柄の入ったバッグに惹かれました。ヴィトンでは、店頭でブルーのデニム生地で作られた小さくて可愛いバックパックが気になりました。私が思わず手を出しそうになりながら佇んでいると、白い手袋をしたヴィトンの若い男性店員が慌てた様子で近寄ってきました。「これ、いいですね!」と声をかけると、これは他所の店では手に入らない今年の最新型バージョンですとのこと。ここで買って、オークションに出品すると買値の2倍ほどで売れるのだとか。値段を聞きました。30万円とのこと。すぐに阪急出口へと踵を返しました。

次に向かったのは、ホテル日航福岡のメインバー「夜間飛行」です。雨が降っていたので、博多駅から祇園駅まで続く長い地下通りを行きます。痛風で痛む足をひきずりながら、ホテル日航の地下2階から、エレベーターで、ホテルロビーへ。「夜間飛行」は、時間が早いせいか、他に客はいません。バーの中央に、YAMAHAのフルコングランドピアノが置いてあります。その真ん前の席に案内されました。夜8時からピアノ演奏が始まるとのことです。ケンタッキーバーボン「Eagle Rare」の水割りを飲みながら待つことにしました。女性のホールスタッフが、曲のリクエストはありませんか?と聞いてくれました。宮崎駿監督の映画「ハウルの動く城」の主題歌「人生のメリーゴーランド」を注文しました。8時になりました。女性ピアニストの登場です。その頃には私の周囲にはスーツやドレスで着飾った方々が三々五々集まっていました。女性ホールスタッフがピアニストに耳打ちしています。私のリクエストを伝えてくれているのでしょうか。ピアニストは頭を横に振りました。ホールスタッフは、私のところへ来て、「弾けないようです、代わりの曲がありますか?」バッハの「G線上のアリア」を注文しました。ピアニストは実に見事に弾いてくれました。思わず拍手をしました。

その後、ピアニストは、「春の野を行く」という曲を弾いてくれました。早春のまだ枯れた野辺を一人、旅行く私自身の姿が見えるような気がします。あるいは、京都円山公園の満開のしだれ桜から花びらが舞い落ちる様を眺めているような心持ちです。その後も、ピアニストは「いそしぎ」や「softly as in a morning sunrise 」などなど、たくさんの曲を弾いてくれました。ピアノによるマッサージを受けているようでした。

天草医報2020年5月号へ掲載 2020年4月30日校了

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