「ワイン・アカデミー」

 ホテルオークラ福岡のメインバー「ハカタガワ」に通い始めて、7-8年くらいになる。ある時、地下レストラン街のフレンチの店で、ワイン・アカデミーなる教室が開かれていることに気付いた。月に一度、1年間で計12回あるらしい。コロナ禍が始まった3年前の2月頃、4月から始まるその教室に参加の申し込みをしていた。しかし、案の定、コロナの感染拡大を受けて、その年の教室は中止となった。その翌年も、翌々年も中止となった。今年の3月になり、やっと、開催する予定であることの連絡が、ホテルのチーフソムリエよりあり、すぐに参加の意思を伝えた。

 ワイン・アカデミーの教室は、4月からの毎月第4木曜日、午後7時からの約2時間で開催される。シャンパンや白、赤ワインを毎回、5種類ほど飲みながら、そのワインの生産された地方の気候や風土、歴史から始まり、様々なブドウ品種やその味わい方、嗜み方を学ぶのだ。もちろん、それらのワインに合った、フレンチ料理も提供される。

 4月の第4木曜日から参加を開始した。交通手段は、天草エアライン午後3時45分発福岡行きを利用する。地下鉄福岡空港駅から地下鉄に乗ると、ものの12-3分で、中洲川端駅に到着。本渡の自宅を3時に出ても、2時間後には、ホテルオークラ福岡のメインバーに坐っていることになる。

 バー「ハカタガワ」で、少々、水割りなどをたしなんだあと、午後7時からの、ワイン・アカデミーに参加するのだ。

 今年4月から参加して、既に4回の講習が終了した。教室に参加している、私を含めて6名の人となりも、少しずつ分かってきた。ワインを飲みながら、そのワインについての色んな疑問や、その味わいについての感想が飛びかうからだ。

 男性は私を含め4人。女性が2人である。男性は、30代1人。50代1人。60代1人(私)。70代1人。女性は30代1人。50代1人である。その方々との会話や人物像については、次回からのエッセイで書いてみたいと思っている。

 4回目の講習となる、7月27日のことだった。平日でもあり、空席には余裕があると考え、天草エアラインの予約はしていなかった。天草エアラインのホームページ上で、運行状況は確認。通常運行中であることも知っていた。その日、午後1時半からの天草市複合施設「ここらす」での乳児健診を終え、3時頃、自宅を出ようとした。一応、スマホで、天草エアラインの運行状況を再び確認した。すると、さっきまで通常運行と表示されていたのに、いきなり欠航と表示されている。空は明るい。びっくりして、天草エアラインに電話をしてみた。

なぜ、急に欠航になったのかの理由が知りたかったからだ。すると、福岡市上空が、ものすごい雷雲で、福岡空港の滑走路そのものが、一時的に閉鎖されているためとの返事だった。

 今すぐに、車で出発すれば、順調に行けば午後6時過ぎには、ホテルオークラに到着できるだろうと考え、すぐに出発した。

 松橋インターで、高速に乗るまでは良かったのだが、緑川PAを過ぎた頃から、大粒の猛烈な雨に襲われた。視界不良のためスピードが出せない。線状降水帯に突入したのだ。大雨から解放されたのは、玉名PAを過ぎたあたりだった。時間をロスしていた。

 鳥栖インターあたりで、渋滞が始まった。鳥栖インター手前で、高速道路工事が行われていたためだ。再び時間をロスした。ほうほうの体で、博多区下呉服町の自宅マンションに辿り着いたのは、午後6時50分。駐車場に車を停め、自宅ドアも開けず、そのままタクシーを捕まえ、ホテルオークラへ。丁度、7時に到着した。

 タクシーにスマホを置き忘れ、慌ててホテルロビーのベルガールに相談すると、玄関カメラで確認し、直ちにタクシー会社に連絡してくれた。スマホはただちに戻ってきた。

 今回の教室は、南フランス「コート・ド・ローヌ」のワインがテーマだった。何とか無事に遅刻せずに参加できた。

 その後、ふとした時、天草エアラインの、ホームページ上での運行状況の表示は、とてもありがたいものだなと思い至った。あの時、運行状況を確認することなく天草空港へ行っていれば、確実に、午後7時には到着出来なかったのだ。

 自分のクリニックにも、それは当てはまる。自分はワイン・アカデミーに参加するために、普段は休まない、木曜の午後と翌日金曜日の外来を突然休診としているのだ。それを知らず、具合の悪い、発熱のあるこどもを、親は一生懸命に自分の仕事を休んででも、高くなったガソリンを使ってでも、連れてくるのだ。連れて来たのに、「休診」の札が掲げられていれば、その失望感は大きい筈だ。その申し訳なさに思い至った。

 天草エアラインと同じように、リアルタイムで、診療状況をホームページに載せればいいのだ、ということを思い付いた。そうすれば、自分の状況に応じて、休むことのハードルも下がる。早速、妻に、そのことを相談した。妻は、この数年来、何かから逃げるかのようにコンピューターのプログラミングに没頭していて、ホームページ作成などは、最も得意とする分野であるからでもある。

 頼んだ翌日には、自院のホームページが出来ていた。ホームページへと繋がるQRコードも作っていた。スマホでQRコードをチェックすると、自院のホームページにとび、リアルタイムでの診療状況を見ることが出来るようにした。

  今のところ、ホームページを持たれていない診療所の皆さま。その作成を無料で請け負うとのことです。作るのは趣味らしいです。これを機会に、ホームページを、持たれてみませんか。突然のお出かけや体調不良で休診を余儀なくされたりの場合、そのハードルがかなり下がると思われます。

掲載情報

掲載誌天草医報
掲載号2023年9月号
発行ナンバー151
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